万魔殿で昼食を…



空中庭園にて昼食を摂っていた吟遊公爵の傍らに、
第七座天使の侯爵が姿を現した。
昼食時だというのに手ぶらで現れた侯爵様は、
吟遊公爵が座っている噴水の縁に手をついて、ぐっと身体を乗り出した。

「ひとくちよこせ」

どんなにむっつりとした表情を作ってみせても、
どんなに低い声を出してみせても……。
公爵様の前でぱかんと口を開けるそのさまは、
餌をねだる雛鳥と少しも変わらない。
いつまでたってもどこかしら甘え癖の抜けない第七座天使の侯爵に、
くすくすと小さな笑い声を洩らしながら……
吟遊公爵は食べていたオムライスの一口分を、
銀のスプーンの上に掬い上げた。















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